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アリシアは庭園へ向かった。七色の薔薇が織り成す庭園は、闘いに疲れた身体を変わらず癒す。
小鳥と戯れている妹を認めるとアリシアは声をかけた。
「サアラ…」
サアラは笑顔で振り向いた。
「アリシア姉様!何時お帰りになったんですか?」
屈託の無い笑顔。
姉妹だが鋭い目付きのアリシアと違い、サアラの顔は慈愛に満ちていた。
「先程だ。剣の修行はどうした?我が妹よ」
アリシアはため息をついた。
二人は、幼少の頃に皇后である母を亡くしていた。
サアラにとって、アリシアは姉であり母でもあった。
「ごめんなさい…姉様…。私は闘いが…どうしても好きになれないの…」
アリシアは帯剣してるレヴァーティンを抜いて地に刺した。
「フッ…私もだ。しかし、我等は誇り高き天上の民であり、その皇族なのだ。先陣を切り、民を導かねばなるまい…?」
「…うん…分かってる」
アリシアは少し言葉をくぐもらせた。
「サアラ…」
「え?」
アリシアの言葉を遮るかの様に、皇族護衛軍の剣士がアリシアの背後で膝間づいた。
青髪で女性的な顔立ちの少年剣士。
しかし、アリシアの右腕とされる力量を持っていた。
「殿下。会議の御時間です」
「エヴァンスか…。すぐ行くと伝えよ」
「御意」
「サアラ。話の続きは後でな…。剣の修行を怠るでないぞ」
そう言って、アリシアは踵を返した。
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