24人が本棚に入れています
本棚に追加
/54ページ
サアラは深夜に目を覚ました。
窓の外に目を向けると、赤い月が陰ろうとしている。
星々の瞬きを、しばし眺めてから自室を出た。
絢爛な回廊も、深夜には薄暗く、月灯りを頼りに調理場へと向かった。
階段を降りようとした時、ふいにアリシアの部屋から灯りが漏れているのに気付いた。
…姉様。まだ起きてらっしゃるのかしら?
サアラはアリシアの部屋の前に立った。
そこから声が聞こえる。
「…しかし…斯様な話…俄に信じられませぬ!」
「代々、皇帝にのみ語り継がれて来た事なのだ」
サアラは目を丸くした。
話してるのは、父と姉だった。
「しかし生け贄とは尋常な話ではありません!サアラは私のたった一人の妹なのですぞ!」
……生け贄?
「封印は余の世代で確実に解かれるのだ。生け贄の聖女は正統な皇族の血筋の女子でなくてはならぬ」
「そんな…!」
「封印が解かれれば、地上は元より…天上すら破滅するのだぞ…サアラも喜んで人柱となろう」
サアラは二人の会話を聞いていく内に震え出した。
サアラは、よろめいて背後の花瓶にぶつかった。
「誰だ!?」
皇帝が怒鳴ると、サアラは慌てて階下へと走って行った。
「父上…!」
「サアラに話を聞かれたようだ…即刻、捕らえるのだ!」
「しかし…!」
「ならん!余の命令に逆らえば、お前は元より部下も家族も皆殺しだ!」
「は、はっ!」
アリシアは膝間づいた。
…くっ。
サアラ… …
最初のコメントを投稿しよう!