序章 二人の皇女

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サアラは深夜に目を覚ました。 窓の外に目を向けると、赤い月が陰ろうとしている。 星々の瞬きを、しばし眺めてから自室を出た。 絢爛な回廊も、深夜には薄暗く、月灯りを頼りに調理場へと向かった。 階段を降りようとした時、ふいにアリシアの部屋から灯りが漏れているのに気付いた。   …姉様。まだ起きてらっしゃるのかしら?   サアラはアリシアの部屋の前に立った。 そこから声が聞こえる。 「…しかし…斯様な話…俄に信じられませぬ!」 「代々、皇帝にのみ語り継がれて来た事なのだ」 サアラは目を丸くした。 話してるのは、父と姉だった。 「しかし生け贄とは尋常な話ではありません!サアラは私のたった一人の妹なのですぞ!」 ……生け贄? 「封印は余の世代で確実に解かれるのだ。生け贄の聖女は正統な皇族の血筋の女子でなくてはならぬ」 「そんな…!」 「封印が解かれれば、地上は元より…天上すら破滅するのだぞ…サアラも喜んで人柱となろう」 サアラは二人の会話を聞いていく内に震え出した。 サアラは、よろめいて背後の花瓶にぶつかった。 「誰だ!?」 皇帝が怒鳴ると、サアラは慌てて階下へと走って行った。 「父上…!」 「サアラに話を聞かれたようだ…即刻、捕らえるのだ!」 「しかし…!」 「ならん!余の命令に逆らえば、お前は元より部下も家族も皆殺しだ!」 「は、はっ!」 アリシアは膝間づいた。 …くっ。 サアラ… …  
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