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暗く静まり返った帝国城の明かりが徐々に灯り始めた。
サアラは寝着のまま城を飛び出して、草木を掻き分けながら走った。
息も絶え絶えで走るサアラの背後から、複数の兵隊の足音が徐々に近づいて来るのが聞き取れる。
逃亡の果てに、サアラは天上の大地の端までたどり着いた。
そこからは雲を隔てて、広大に広がる地上の大地が見渡せた。
「ここまでです。殿下」
兵士達を引き連れたエヴァンスが、サアラの眼前にいた。
捕まれば、サアラに待ち受けているのは死の運命。 サアラは絶望の表情を出して肩を落とす。
エヴァンスはサアラの元まで丁重に歩み寄る。
そしてサアラの耳元で囁いた。
「アリシア様からです。この実を含めば一定時間の浮遊が可能になります。それでも助かる可能性は、万が一ですが…」
エヴァンスはサアラに浮遊の実を手渡した。
「アリシア姉様…!」
サアラは吹き出る涙が抑えられなかった。
「さあ、お急ぎ下さいませ…どうかご無事で」
「有り難うエヴァンス」
サアラは躊躇いながらも、目を瞑り勢いよく天上の大地より飛び降りた。
幾重にも連なる雲の層を突き破っていき、そしてサアラは実を含んだ。
ふいに全身に冷たい物を感じた。
サアラは、ゆっくりと目を開ける。
無数の白くて丸い冷たい物が、サアラの周囲を舞っていた。
これが伝え聞く雪なのだろうとサアラは思った。
眼下には、まだ見ぬ地上世界が広がっている。
サアラの身体は浮遊し始めて、ゆっくりと地上へ降りていった。![image=287344597.jpg](https://img.estar.jp/public/user_upload/287344597.jpg?width=800&format=jpg)
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