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穏やかな性格の両親、そこに一人っ子で生まれた俺。
それはそれは平和な家庭だった。
親父にはよく遊んでもらったもんだ。そう、ベタに公園でキャッチボールとか。
泥だらけで帰れば、あったかい夕飯を作ってにこやかに迎えてくれる母さんがいた。
夫婦仲も親子仲も、万人が羨むほど。
まさに絵に描いたような幸せ家族だったというわけだ。
わけだ、が
どうやら幸せってのは長くは続かないらしい。
それは、俺が小学校四年生の時だった。
俺を特に構い倒していた優しい父は、
嘘みたいにあっさりとこの世を去った。
バイク事故だった。
高校生にバイクでぶっ飛ばされて即死。
それに動揺したその高校生も、操縦を誤ってバイクごと派手に転んで死んだ。
母さんは当然泣いた。
泣いて泣いて、その後真っ赤になった目を細めて笑った。
これからは二人で頑張ろう、と。
それから今まで母子家庭で上手くやってきたわけだが、不幸はこれだけじゃ済まなかったらしい。
「――――母さん?」
父の死から七年、高二の夏。
俺を女手ひとつで育ててきた母は、家の中で冷たくなっていた。
原因は過労。
父と母の骨が入った墓前で、俺はただただ呆けるばかり。
小四で父を亡くし、
七年経って母もその後を追い。
高校二年、満十七歳の夏。
俺はとうとう、独りになった。
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