第十五章

7/9
222人が本棚に入れています
本棚に追加
/157ページ
 全体合奏が終わると、みんなチョコを渡したり、もらったりした。 あたしももらい、いつも通り音楽室を出て、教室へ練習しにいく。 階段を昇ると、山内さんが泣きながら降りていった。  山内さん、どうしたんだろう?  そう疑問を抱きながら教室のある階に行くと、将が立ち尽くしていた。 あたしはそれとなく聞く。 「今の山内さんだよね? 自分の彼女泣かしちゃ駄目じゃん」 「……彼女じゃない」  将はポツリと言った。 「どういうこと?」 「お前と別れてから、誰一人とも付き合ってない。さっき渡されたんだ。チョコ。告白もされた。でも断った」 「何で?」 「お前のことが好きだから」  その言葉に、頑なになっていた心がやわらぐ感覚がした。  将……誰とも付き合ってなかったんだ。
/157ページ

最初のコメントを投稿しよう!