第十六章

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 今こうしてわかる、将への気持ち。 あたし将のことがまだ……。  その気持ちとは裏腹に、素直に将のもとへ戻れない自分がいる。  あたしが黙って考えていると、大樹君は優しく言った。 「明音ちゃん。僕の気持ちや将君の気持ちを抜きで、明音ちゃんの気持ちだけで考えてみて」   二人の気持ちを抜きで……? あたしは……。 「もう決まったみたいだね。彼のもとへ行っておいで。……きっと待ってる」  あたしは、寂しげに笑う大樹君の手を握った。 「いつも優しくしてくれたのに、ごめんなさい。でもね、大樹君に気持ちが傾いたのは本当だよ。……そばにいてくれて、ありがとう」  あたしはそう言い残し、教室を出た。
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