プロローグ

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 夜空が、綺麗――。  今日はなかなか寝付けなかったけれど、そのおかげで雲一つなく星が瞬いているのを見れたので、少し得した気分です。  それにしても夜の散歩はいいものです。程よく涼しくて、静かに鳴く虫の声が気分を心地好くさせる。昼間の活気溢れた街も好きですが、こういうのも悪くありませんね。 「――あら?」  そろそろ家に帰ろうと思い、ふと前を向くと、壁に寄り掛かりながら寝ている人が、一人。  星空を眺めてる途中で寝てしまったのかしら? でもこのままだと風邪を引いてしまうかもしれないわね。  そう思って近付く。今は真夜中で外は暗く、その人は俯いていたので遠目からでは判断出来なかったけれど、その人に向かって歩を進めると、朧げだったその風体が、やがてはっきりと見えてきた。  細身ではあるけれど、筋肉質な体格からして男性のようですね。  薄手のマフラーと黒色系のTシャツ、着古したようなグレーのジーンズと、とりわけ目立つ身なりではなかったけれど、彼は私に強い印象を与えさせた。  ショートヘアと呼ぶには少し長めの髪は濃い紅色……深紅と言うのでしょうか? 不思議と引き込まれてしまうような、蠱惑的な美しさが、その髪にはあったから。  先程見た星空とはまた違う、綺麗。
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