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緑の生い茂る小高い丘には、人ならざる物が棲むという。
でも噂はあくまで噂と、ある旅人が一度だけ近づいてみた。
実際、そこはただの古い城だったという。
青空に溶けそうな、存在さえも薄れそうな石造りの城は、本当にいわゆるよくある古城だった。
風が吹くと更々と崩れた石の欠片が流れ、中は埃だらけの蜘蛛の巣だらけ。
しかし、刃物で傷つけた痛々しい傷が石壁に浮かび、誰もいないのに誰かのいる気配がして、不気味なことこの上ない。
何よりこの城の空気が不快で、旅人は城を離れた。
城と町との間に深い緑の森があるゆえに、古城はその荘厳さと不気味さを引き立たせている。
近隣の町々の人はそこを恐怖し、幽霊城と呼んでいた。
――が、これはそういう話ではないし、今はそういう場合ではない。
なにしろ、その古城近くに自分はいるのだから。
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