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「城に兵が出入りするようになったのは、何時からなんですか?」
ぴりぴりとした緊張を逆なでする、のんびりとした問い掛けに俺は頭を抱えた。
問い掛けてきたのは軽装だが、明らかに貴族な雰囲気を隠そうともしない、声同様にのんびりとした空気を纏う男だ。
陽光に透ける細い金の髪は長く、一本に編んであるし、細められた瞳の奥はペリドット石の瞬きを柔らかく収めている。
両の耳には深みのある青と緑のピアスが光を飛ばしているし、悔しいことに両方ともが白すぎる彼の肌によく馴染んでいる。
しかもその上、上等のくすんだ緑のマントを羽織り、隙間からは二藍のくすんだ青緑が覗いている。
マントの下の体格はおよそ頼りない細さ。
「昨日の夜言ったろ?
大体一ヵ月位前からだよ」
薄汚れたチャコールのキャスケット帽の下から男の様子を見て、俺はまた深くため息をつく。
身分の違いとかそういう問題ととっていいのかわからないが、俺の着ているのは着古したぼろのシャツと鈎裂きだらけの灰色のオーバーオールだ。
しかも全部が全部、貰い物。
他人と自分を比べるなんて愚かなことと知りつつも、こののんびりとした男を相手にすると別だ。
何も考えずに、ただのうのうと暮らしてきたようなヤツが、俺より上等の物を着ていると思うと、理不尽に腹が立つ。
「で、どうやって入りましょうか?」
予想されていたとはいえ、嫌になる。
これで金づるじゃなかったら、とっくに有り金騙し取って放り出しているところだ。
「まず、あんたの案を聞いておこうか」
ゆっくりと振りかえった先で、男は嬉しそうに頷いた。
嫌な予感は、もっと前からしていたんだけどな。
男の名は、ディルファウスト・ラギラギウス・クラスター。
西の大国の王子で、実は今のところの高額賞金首である。
存在そのものが金づるでなければ、誰がこんな男と行動を共にするものか。
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