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話を持ってきたのは、王子の方からだった。
古城と森を挟んで少ししたところに、あまり大きくない宿場町がある。
必ずしも滞在しなければならないというほどの重要ポイントではないが、風がよく通る、人も町もすっきりとした良い場所だ。
あまり大きくないので、宿屋も酒場も一続きで一軒しかない。
そこで俺は約一年半、世話になっている。
もともと短気は自覚しているが、その日はことさらに機嫌が悪かった。
絡まれるのも日常茶飯事だったけど、その日は特別。
剣を抜いて切りかかってくる剣術士なんて、そうはいない。
しかもどこかの紋章を引っさげて。
傭兵の中には剣術士が多いとはよく聞くが、一国に仕える者となるとどうしても質が落ちる。
下っ端の兵士となると剣術見習いと云って趣味程度の腕しか持っていないし、そのまま仕える物が大半なので一応の形として剣術士と呼ばれはするが、大した腕ではない。
下手をすると傭兵の方が強かったりする。
剣で身を立て続ける者はより優れた技を目指して国を離れてしまうし、現在の所、本当の剣術使いというのは一国に一、二人しかいないと囁かれている。
ランクから云うと剣術見習いが一番弱く、剣術使いが強いということになり、剣術士はその中間だ。
一般にそう広まってはいても、子供なら彼等は楽勝だと踏んで絡んできたのだろう。
が、世の中そう上手くはいかない。
剣を使うだけが戦いじゃないし、喧嘩は頭と拳でするもんだ。
そういうのが拳闘士と呼ばれる者達で、接近戦を得手とする。
身一つで始められるので誰もが一度はかじるが、剣に目覚める者も少なくない。
そんなワケで、あまり本当に拳闘士と呼ばれる者は少ないのだが、本物は剣術使いにも引けを取らない技と攻撃力を誇る。
俺が持っているのはそんな技なわけで、当然、俺の圧勝だった。
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