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こうみると噂の真偽の程は測れない。
数多の刺客を返り討ちにしているとか、刺客のアジトに乗り込んで壊滅させたとか、捕まえた刺客で魔法実験を行っているとか、実は大陸でも有数の魔法使いだとか。
恐ろしげな物から女子供が胸をときめかせそうなエピソードまであるから、まさにピンキリ。
「それを聞いてどうすればいいんだ、俺は?」
今、俺に言えるのはこいつがとても世間知らずで騙しやすそうだということくらいだ。
「それでですね、腕の立つリンカさんに手伝っていただきたいんです。
お願いできませんか?」
顔は極上だが中身は最低、と勝手にランクを付けて笑んで返す。
「いいぜ」
「わぁ、ありがとうございます~」
張りついた笑顔をとたんに輝かせる王子に俺は畳み掛ける。
「なに、ただとはいわない。
まず、前金で五千オールな」
このリンカの腕を安くみて貰われても困る。
そこらの国に仕える剣術使いに簡単に負けてやるような人間じゃない。
しかし、この二階建て地下付きの屋敷一つ買えそうな金額に、王子は困ったようにするだけだ。
「え~、今、ちょっと持ち合わせが……」
これだから、金持ちは。
だがしかし、ここでこの客を逃がすと金づるが逃げる。
「じゃ三千」
しかたない。
地下は諦めるか。
「だから持ち合わせが……」
こんぐらいもっとけよ、王子なんだから。
という言葉を寸での所で飲みこむ。
正体を俺が知ってると知ったら、仕事が終った後の引渡しが面倒だ。
「二九八〇」
「二千」
「二八五〇」
「二五〇〇オールだったら、なんとかなりそうなんですが」
交渉の途中で思い出したように、手元の指輪を一つ引き抜く王子を、つい呆気に取られて見てしまった。
動作が必要以上に洗練されているなんてことは、この際関係ない。
「これで代用、できますよね?」
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