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「はぁ……」
少年――エルディ=ガーネット――は広くなった部屋を見つめ、ため息を洩らした。
美しい髪と同色の蒼色の瞳は、喪失感に溢れている。
「エルディ、そうため息ばっかつくなよ…。
余計暗くなるだろ……」
エルディの隣から、燃えるような紅の瞳と髪をした少年が言った。
少年の名はバッシュ=クリムンド。
彼ら二人はグレイ学園に通う一年生だ。
そして世間に波紋をもたらした、生徒失踪事件の数少ない当事者でもある。
もっとも、あと三人当事者がいるのだが。
「けどよぉ、ホントに広くなっちまったな。
確かに元々広かったけどよ……」
バッシュは哀しげな瞳で部屋を見渡す。
『彼』と一緒に買った家具。
いつも読んでいた料理の本。
そして、食卓の三つの椅子……。
全てが過去の物となってしまった。
「そうだね……」
「ったく、『あいつ』は一体何してんだよ!
早く帰って来いよな!みんな待ってんだからよぉ!!」
バッシュは頭をガシガシと掻きながら言った。
しかし彼自身、いくら愚痴を言っても、『彼』が帰って来ない事など理解していた。
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