五人の生活

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「はぁ……」 少年――エルディ=ガーネット――は広くなった部屋を見つめ、ため息を洩らした。 美しい髪と同色の蒼色の瞳は、喪失感に溢れている。 「エルディ、そうため息ばっかつくなよ…。 余計暗くなるだろ……」 エルディの隣から、燃えるような紅の瞳と髪をした少年が言った。 少年の名はバッシュ=クリムンド。 彼ら二人はグレイ学園に通う一年生だ。 そして世間に波紋をもたらした、生徒失踪事件の数少ない当事者でもある。 もっとも、あと三人当事者がいるのだが。 「けどよぉ、ホントに広くなっちまったな。 確かに元々広かったけどよ……」 バッシュは哀しげな瞳で部屋を見渡す。 『彼』と一緒に買った家具。 いつも読んでいた料理の本。 そして、食卓の三つの椅子……。 全てが過去の物となってしまった。 「そうだね……」 「ったく、『あいつ』は一体何してんだよ! 早く帰って来いよな!みんな待ってんだからよぉ!!」 バッシュは頭をガシガシと掻きながら言った。 しかし彼自身、いくら愚痴を言っても、『彼』が帰って来ない事など理解していた。
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