2.出来事

9/17
前へ
/120ページ
次へ
ただ触られただけなのに、身体が反応する。 (どうか聞こえてませんように……) そんな堅司の願いも虚しく、悠斗の一言で打ち消された。 「何?感じちゃった?」 堅司は悠斗を睨み付けた。 「顔真っ赤……こうやって見ると何気に美人だな」 悠斗は一人で納得したように、ウンウンと頷いた。 これ以上、何かされたら堪ったもんじゃないと、堅司は勝負に出た。 「西脇、降参だ。 言うから解放してくれ……なっ?」 言う前に解放されれば成功。 言わないと駄目だと言われたら失敗。 さぁ、吉と出るか凶と出るか……。 「……もうそれはいいや」 「えっ……? いいなら、どいて外してくれよ」 吉ではなく大吉だった。 「ヤダよ」 そして、直ぐに凶へと変わった。 まさに天国から地獄。 何で断るのか堅司には分からなかった。 そもそも、こうなったのは好きな人が居る居ないで言い合いになったから。 だがそれ以前に、こうなるのも可笑しい。 それに、この状況になった原因をもういいと言っておきながら、悠斗とは止めようとはしない。 (西脇はヤダと言ったんだ?) 堅司はこの状況を打破する術を失ったのだ。
/120ページ

最初のコメントを投稿しよう!

283人が本棚に入れています
本棚に追加