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野末堅司(ノズエケンジ)は大学生になったのを期に、家を出て一人暮らしをしている。
そんな生活も早、1年2ヶ月。
それなりに楽しく、充実した毎日を送っていた。
なのに、その日常が数時間前に壊れた……。
堅司は今、自宅に向かい脇目も振らずひたすら走っていた。
身体が悲鳴をあげる。
肺は酸素を欲しがり異常な速さで稼動し、心臓はドクドクと脈を打つ。
それでも尚、堅司は自宅に向かい走り続けた。
自宅に着き、勢いをそのままに玄関へと入り、ドアに背を預けズルズルと崩れ落ちる様にヘタリ込む。
どの位の時間、走っていたのか分からない。
堅司は右手で胸倉を掴み、身体に酸素を充分に行き届かせる様に、深く大きく呼吸をする。
徐々に息苦しさも無くなり、疲労感だけがズシリと身体に残る。
そして、何も考えられなかった思考回路が回復したと同時に、堅司の身体から血の気がサーっと引いた。
胸倉を掴んだ右手が震え、それを止めようと左手で抑えるが、その左手も震えている為、止める事は出来ずにいた。
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