1.逃げ

3/3
前へ
/120ページ
次へ
堅司は両手をギュッと握り締め、思い切り足の間に振り下ろし床へと叩き付けた。 それでも震えは収まらず、何度も何度も震えが収まるまで、床へと手を叩き付け、気付けば手からは血が滲み出てきていた。 重たい身体を奮い起こし、壁に寄り掛かりながら何とかキッチンに辿りく。 渇いた喉を潤す為に、冷蔵庫から水を出す。 蓋を開けようと回すが、力が入らずに、ボトルが手から滑り落ち足元へと転がった。 「クソッ!!」 今出せる力一杯で冷蔵庫をバタンと締め、その場に崩れ落ちる様に座った。 暫くの間、闇と静寂が堅司を包み込む。 耳に入って来るのは、部屋に掛けてある掛け時計の、カチカチと鳴る秒針の音だけ。 その掛け時計に視線を向けると、針は夜中の3時を回ったところだった。 逃げる様に友人の家を出てから、既に2時間も経っていた。 「……寒い」 6月に入ったとは言え、長時間走った身体は汗が引き冷え切っていたのもあり、寒く感じた。 怠い身体を無理矢理に動かし、シャワーを浴びに風呂場に向かう。 服を脱ぎ、熱めのシャワーを頭から浴びる。 そして、堅司は今日の事を思い返した。
/120ページ

最初のコメントを投稿しよう!

283人が本棚に入れています
本棚に追加