僕の急死に一生。

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 僕を見て、たまにお母さんが言う。  おっきくなったね、って。    よくは覚えてないんだけど、僕はこの家に来て直ぐに、死ぬかもしれないってお医者さんに言われたらしい。  と、言うのも、僕のお腹には、虫がいたんだって。  その虫は意地悪で、僕のお腹から出て行ってくれかなったんだ。    お腹の虫が意地悪するから、小さかった僕は、ご飯が食べれないくらい弱ってしまっていたらしい。    僕がご飯を食べるよう、お母さんは沢山工夫してくれたんだって。  でも、僕は結局、ご飯を食べなかった。 だから、どんどんやせっぽっちになっちゃったんだって。    僕が大きくなる方法は2つ。  まずはご飯を食べる事。 それから、お腹から虫を追い出す事。  追い出す為にはウンチをしなきゃいけなくて。 でも、僕はご飯を食べなくて…。    困り果ててたお母さんは、ある日晩ご飯の支度をしていた時に、近付いて行った僕に、魚を触ったままの手で僕においでおいで、ってしたんだって。  近付いて行った僕は、魚の匂いのするお母さんの手を舐めたんだって。  それでお母さん、もしかしたら!って思って、僕のご飯に、その魚の汁をかけたんだ。    その魚の名前は“チカ”。 僕の命を救ってくれた魚だ。    チカの匂いがするご飯を食べた僕は、ウンチと一緒に虫をおトイレにバイバイした。    こうして、今の僕がいる。    大きくなったでしょ?  でもお母さんは、成猫にしては小さいね、だって。    もっと大きくなるんだ!  だからお母さん、僕にチカをまた頂戴ね?
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