0人が本棚に入れています
本棚に追加
そうして笑みを見せるレオハルトに反応し、我に返る下っ端三人。
ダグラスが出来て十年が経つ。
妻と子を亡くした話は、ダグラス誕生の時に、何故この賊が出来たのかを言うときに一度だけ語ったもの。
レオハルトの優秀な『部下』からも、『下っ端』からも厚く心配されたものだ。
それは、この賊にいる者達は、レオハルトの人を包み込む様な慈愛と強き心意気にひかれた者達だからこそだ。
「うぃっす、有難うございます!」
「それっすよ。俺は、そういう賊長の優しさにひかれたんすよ」
「これからも、どこまでもついて行くっす」
気合いの入った下っ端達の声に力強く頷くレオハルト。
そして、下っ端が抱いていた男の子を受け取ると。
「では、急いで戻るとしよう。一人分多めに食料を用意しなければ」
「おっ、それじゃあ…」
「あぁ、育てるさ。元が何処の奴だろうと関係ない。お前等の様に粋の良い男前にな」
「うおぉっしゃあぁ!」
捨てるには凄く可哀想だという気持ちが、本当はかなりあったのか。
下っ端達は、跳び上がり、喜びを噛み締めていた。
そんな空気の中、下っ端三人は。
「ところで賊長」
「ん、何だ?」
「子供を見つけた褒美と言ってはなんですが」
「ふむ、言ってみろ」
「………」
一息置いて。
「「「俺達を賊長の認める優秀な部下にしてくれないっすか?」」」
そう、部下とは下っ端よりも上で、レオハルトに頼られる位でもあるため、憧れる下っ端が多い。
下っ端三人が一斉に声をかけ、しばらく考えたレオハルトは…。
「…よし」
「「「おっ!」」」
「お前等は永遠に下っ端だ!」
「「「えぇっ!?」」」
「本音を言えば、部下にしたとして、そいつが元下っ端だからまた下っ端と、俺の中で再び認識されてしまうお前等が可哀想だから」
「「「そりゃないっすよ!」」」
こうして、大笑いするレオハルトと、苦くも大笑いをする下っ端三人は互いに喜びや『笑う』という快楽を噛み締めながらキャンプに戻っていくのだった。
そしてレオハルトは、男の子の名前を決めた。
セルバンテス・ダグラス
通称 セル と。
最初のコメントを投稿しよう!