0人が本棚に入れています
本棚に追加
――それから、十四年後の夏のある日の夕方
ダグラスの一賊は、ブリドラスの中央に位置するラクリマの森の真西から中へ、盗賊の一行を追っている最中。
これは、ダグラスが出来た時とやる事が変わっておらず、盗み・村や街を襲う者達を消し、自分達の正義を貫いてこその行動なのだ。
「どりゃあぁ!」
ガキィン!!…ジジジッ…
「おぉっと、危ねぇっ!」
下っ端の一人が、自分のサーベルに氷属性の魔力をの込めて盗賊に向けて振るい、手前に大きな氷の棘を具現化させて放つ。
そして、それは盗賊の杖から放たれ盾となった炎によって阻まれ…たかの様に見えたが。
氷の棘は溶けきらず、盗賊達を襲うが、ギリギリのところで避けられた。
その他にも土・闇・雷・風・光と、様々な魔法がぶつかり合い、衝動がほとばしる。
しかし、下っ端だけではもの足りず、部下を投入し、なんとか六割は懲らしめたが、あとの四割はまだだった。
周りを見れば、魔法の衝動によって、木々が斬り崩され、立て続けに燃え、森が荒れていた。
「くっ…、厄介な奴らだ」
「俺が出るぜいぃ!」
裾がボロボロの赤い古びた半袖シャツに、赤い毛皮で作ったリストバンドを両手首に巻いている。
首には骨角器の首飾りをかけ、黄土色の古びたズボンを穿き、髪の色は真紅色。
下っ端&部下の背後から勢い良く出てきたこの男こそ、セルバンテス・ダグラス。
位は、レオハルト曰く、虫以下。
「セルか。お前がいても変わんねぇよ」
「なんだとうぅ?よぉし、俺が頼りがいのある男ってことをぉ…んん?」
出て来たまでは調子の良かったセルだが、急に表情が硬くなり、下っ端の一人が心配して声をかけた。
「どうした?セル」
「なんかよぉ、西の方向から悲鳴が聞こえなかったかぁ?」
「気のせいじゃねぇのか?」
「…そうだなぁ、そうだといいなぁ……よぉし!」
セルは、固まった気をなんとか取り直し、引き続き盗賊を追い続けた。
嫌な胸騒ぎを噛み殺しながら。
最初のコメントを投稿しよう!