奈落の底

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翌日、会社は休みたかったけど大事な仕事が残っていたため、出社した。 豊に振られた日はどうやって帰ったのかわからない。 赤く腫れた目を気にしつつ、仕事に没頭した。 「‥‥‥君」 「‥‥‥井君!」 「桜井君!!」 部長に呼ばれたのにも気付かず仕事に没頭していた。 怪訝な顔の江藤部長に呼ばれ、応接室に入った。 「桜井君は今、付き合っている人はいるのかね?」 「‥‥‥‥はぁ?」 今、取り組んでいるプロジェクトの話だと思っていた私には、理解出来ないでいた。 「桜井君も30手前だろ。そういう人はいるのかね?」 「‥‥‥いませんが…」 豊の顔がちらついて胸が痛くなった。 「そうか…なら私とどうかね?」 そういうと席を立った50歳近い脂ぎった部長が、膝の上で握りしめていた私の手を掴んだ。 「止めてください!何するんですか!」 力の限り振りほどいた私の手が部長の顔に当たった。 勢いよく当たった部長の顔には、指輪のおかげでキズが出来ていた。 「桜井君!君にはもう任せられない。今度のプロジェクトには高橋君と北野君に任せることにするよ」
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