奈落の底

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「あのプロジェクトは私が立案したものです。最後までやらせてください!」 「もう君には任せない!高橋君は君よりキャリアが長いし、北野君は高橋君の教育を受けていてやる気のある新人だからね。彼らに任せることにするよ」 「部長、セクハラの上にパワハラは止めてください!」 「君にはもう用がない!出ていけー!」 顔をゆでダコのように赤くした部長に吐き気が一層強まった。 言い様のない怒りが込み上げてくる。 「失礼します。セクハラ部長様」 嫌みを残して応接室を出ると、何かが割れる音がした。 (安っぽいガラスの灰皿を割ったかな…) ムカムカした気持ちを抑え席に戻った。 席に戻った私を元カレとなった豊と、新人教育を受けている北野麗奈が憐れみの目で見つめていた。 私のいる部署は部長が変わってから人事がかなり動いていた。 私よりキャリアの長い人はほとんとが他の部署に移動になり、新人で埋め尽くされていた。 部署内の備品は「経費節減」を大義名分にし、部長が全て粗悪な中古品にしてしまった。 二日続けて気持ちがズタズタにされた私は、今は管理部に移された石田 雅美先輩に愚痴を聞いてもらいたく、飲みに誘った。
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