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なんという事だ。自分の夢を叶える唯一の方法は王子の秘書になる事だけだったのだ。
しかし、これは親孝行になるだろうと気持ちを切り替えた。両親は喜んでくれ、誕生日の時の様に祝ってくれた。
クリティは三日後王子に会うと思うと、別の意味で嫁に嫁ぐ様な気持ちになった。王子の命令は絶対だ。しかも、クリティより一つだけ歳上の王子は、もう城の中心になるくらいの切れ者の上頑固で変人らしい。
たとえ王子が生理的に受け付けないような人間でも、一生王子に従い、命をかけて護らなくてはいけないのだ。
仕事ならいくらでもこなす自信はあったが、クリティは男というものが苦手だった。男性と付き合っても長く続いたためしがないのだ。
それでも、クリティに選択の余地は無かった。このために今まで努力を重ねてきたのに、生まれて初めて間違った選択をした様に思えた。
クリティは誰でも初めては不安なものだと自分を戒め、城に移り住む準備を始めた。城に住めば、とうぶん家族とは会えないだろう。そう思うと少し寂しかった。
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