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「いやちゃうねんて兄ちゃん。」
いきなり声をひそめるように、エルは付け加えた。
「ウチ、さっきコーダのヤツに無理矢理起こされてな、今更こない暑いのに寝られへんやん?んで、ここはひとまず涼をとろ思て、ここまで出てきてん。」
「もうますますいっしょだよ、ソレ。」
「え?じゃあルカ兄ちゃんもかいな!」
「うん。『お菓子くれ』ってね。」
「あ、そこはちゃうわ。ウチ『おにぎりどこだ』やったもん。」
「あははっ。 …でもコーダは僕に『イリアが~』て言ってたけど、彼女は寝てるのかな?」
「あ、それな。ウチ聞いとったんやけど、イリア姉ちゃん、ウチがコーダなすり付けた後なんかモゴモゴ言うてな、またすぐ寝息ピーピー鳴らし始めてん。」
「モゴモゴ…?」
「せや。ウチが察するに、あら意識あらへんかったね。明らかに人の話す言葉ちゃう!思たもん、ウチ。」
じゃあ、イリアは僕の名前なんて言ってないし、コーダに起こされたのもたまたま………?
べ、別に構わないけどさ。
「と、ところでエル、いくら近くまでだってこんな夜遅くに女の子が一人で出歩いちゃ危ないよ?もう少し気を付けなきゃ。」
「ありがとぉな兄ちゃん、心配してくれて…………でも、ルカ兄ちゃんこそ気を付けなあかんで?」
エルの笑顔がどこかイタズラっぽいものに変わったことに、僕は気付いた。
「そない可愛らしい容姿しとっからに、声かけられたのも一度や二度ちゃうやろ?」
「もう……、よしてよエルったら…。」
どうして僕はこうケルム火山のときといい、こういうネタでいじられるんだろう……。
「でも、ルカ兄ちゃんの言う通りやね。こんな夜に一人で出歩くのは間違いだったかもしれん。」
「え?」
「…………。」
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