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何も言う事なく、ただ配下が意見を交わすのを見ているだけのその表情は、何を考えているのかは分からなかった。
――信長様は何をお考えなのか。
確かに勝家の言い分も分かる。
次々と敵地を陥落させている今は、天下に向けて動くのに絶好の機会。
特に北の上杉を陥落させるには今が最善だといえる。
しかし、そこへ[黒衣の妖]が登場した。
次々と領主を殺害する[黒衣の妖]は、敵方に侵入させている隠密の報告によれば、信長の領地にしか出没しないという。
――信長様にたてつく敵、と見なすのが自然だろう。
光秀はそう思考を走らせるものの、どこか納得をする事が出来ず眉を潜ませる。
――[黒衣の妖]、一体何が目的だ?
その時。
外の廊下が騒がしくなり、「失礼します!」と同時に見張りの兵が顔をだした。
「く、[黒衣の妖]と自ら名乗る者が参っております!!」
部屋にいた全員の動きが止まった。
先程まで騒いでいた勝家せえ言葉をなくし、報告してきた兵を見つめる。
「そ、それは真(マコト)かっ」
一番扉に近い場所にいた前田利家が、ようやく言葉を絞り出した。
全員の視線を浴びて固まっていた兵も、利家の言葉にがくがくと頷く。
「真でございます!!お、恐れ多くも信長様に目通りつかまつりたいと!!」
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