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――源、で思い浮かぶのはやっぱり鎌倉じゃ。
昔、日本で初めて幕府を開いた源頼朝。
その名は鎌倉幕府。
しかし今の時代、源家は表舞台には出てきていない。
「おぬし…何が目的かわしに」
「信長殿にお話しします」
秀吉の言葉を実政は遮りすっぱりと断った。
存外に話す必要はないと言われ、秀吉は警戒心を募らせつつも、たどり着いた目的の部屋の前に立ち止まった。
「信長様、つれてきました」
秀吉の声が聞こえてくると、部屋の中にいた一同はぴたりと話すのをやめた。
信長の「入れ」という言葉に扉へ視線が集中する。
利家が扉を開けると、秀吉が脇へよけ、一人の人物が入室してきた。
全員の視線に動揺したりすることなく、その人物はゆっくりと歩みを進ませる。
――『黒衣の妖』。
誰もが視線を険しくする中、ただ一人、光秀だけは疑わしげに表情を歪ませた。
確かに姿格好からすれば、聞いたかぎり『黒衣の妖』。
しかし、首にかけられているという『呪具』が見つからない。
――何故、首にかけていない。
人物――実政は、信長の前まで歩みを進ませてくると、ゆっくりと膝を折りその場へ座り込んだ。
「お初にお目にかかる。私は源実政と申します」
ざわり、と動揺が起こった。
がたんっと勢いよく信長の背後に控えていた小姓、森蘭丸は「無礼者!!」と立ち上がった。
それに続いて勝家や長秀、秀吉らも立ち上がる。
それを、一つの静かな手が挙がりさえぎる。
信長である。
一同らは暫く躊躇うようなそぶりを見せるも、ゆっくりと座りだす。
最後まで渋っていた蘭丸も、「お蘭」と信長に悟られれば渋々と座った。
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