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月夜の晩に、拾ったボタンは、
指先に沁み、心に沁みた。
「ん? なんかあったか?」
砂浜に屈んだ僕を見て、秋が言う。
「いや、別に何も」
「そうか」
夜の海は静かだ。満月が煌々と水面に映える。
「今度は僕の番か」
「そうだよ。お前の番だ。よかったな」
「てゆかなんでこんなことじゃんけんで決めるんだよ」
「それが一番公平だからだろ」
「まぁそうだけどさ」
「面白くなりそうだな、今回も」
「そうだな。お前よりも面白くしてやるさ」
「あぁ、期待しとく」
ふいに笑いが込み上げてきた。
これからのことを想像し、大いに笑った。
秋はそんな僕が可笑しかったらしく、2人で笑い合った。
月夜の晩に、拾ったボタンは、
どうしてそれが、捨てられようか?
Fin.
引用:中原中也『月夜の浜辺』
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