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「ムム……よし、決めたッ!」
何かを決心したかのように頷いた彼女は、突然、残像すら残らない速さで俺に手を伸ばしてきた。
「え……うわッ!!」
彼女の行動に驚いたのも束の間。
俺はその小さな手に襟首を掴まれ、グイと彼女の方へ引き寄せられた。
ただでさえ近かった彼女との距離がさらに縮まり、元々紅潮していた顔が、林檎よろしく真っ赤に染まる。
羞恥と緊張のあまり、言葉を発することもままならない。
ただ、金魚のように口を開閉させるだけである。情けないことこの上ない。
「カルス、お前、あたしの下僕になれ!」
「……はぇい?!」
出逢いは突然で、とんでもないことを言ってのける奇怪な少女であったが――
この瞬間、"モノクロ"だった俺の世界は、鮮やかな"極彩色"に塗り替えられたのだった。
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