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「……まあ、いいケドさ。それより、命の恩人たるこのあたしに、何か言うコトは?」
まだ幼さの残る、あどけない声。
それに反して、年齢不相応に歪められた唇が言葉を紡ぐ。
謝礼でも期待しているのだろうか。
「あ、ああ……助かったよ。後ろにいたの、全く気づかなかったしさ」
遅ればせながら、心から感謝の意を示す。実際、かなり危ないところだった。
感謝してもし足りないくらいだ。
そんな嘘偽りのない感謝に気をよくしたのか、少女はここぞとばかりに意外とふくよかな以下略を張り、言葉を続ける。
「レベル3だからって、油断したらダメだぞ?前のレベルとは勝手が違うワケだし」
確かに、油断は禁物である。
敵が弱かったことが拍車をかけてか、自分の力を過信しすぎていた。
……多分、お互い様なのだろうが。
「これに懲りたら、今後は――」
少女が口を開いた刹那。
俺は言葉の終わるのも待たず、一足に彼女との距離を詰め――少女の顔のすぐ横に、杖の柄を槍のごとく突き出した。
腰に手を当て、ご高説していた少女の頬を、一筋の汗が滴り落ちる。
ほぼ同じタイミングで、彼女の背後に忍び寄っていた白骨が崩れ落ちた。
「……お互い、背後には気をつけよーか」
「……そうする」
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