プロローグ

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「では失礼致します」 「ハイネ、お出かけですの?」 少年が重厚な扉を閉めた所に、少女が呼び掛けた。 柔らかい金の巻き毛と澄んだ湖水を想わせる薄い青瞳は、神々の寵愛を感じさせる。 幼いながらも、国一番ではないかと噂される美貌の持ち主だ。 「学校の友人と約束しているのです」 少女に答える少年も、非常に整った顔立ちをしていた。 素直な髪は黒く、額の中央で二つに分けられた前髪から覗く、灰色の瞳が印象的だ。 しかしよくよく見ると、彼の表情には僅かに違和感を感じる。 だが、それはよほど人を見るのに長けた人物でないと、分からないだろう。 「姫は陛下とお約束ですか」 「ええ、またお話を聞きたくって!」 「姫は陛下のお話が、お好きなのですね」 少女の顔は期待に輝いている。 「だって、とっても面白いのですもの!」 「陛下も、姫とのお時間は疲れを癒してくれると、そうおっしゃいました。どうぞ充実したお時間をお過ごしください」 「ありがとう!」 扉の中に消えていく少女に、少年は深々と頭を下げた。  
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