プロローグ

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『成金』…。 ここには私しかおりませんから良いのですが、平等でなくてはならない王様としてはその単語、普段は使用しないように注意して戴かなければ…。 「本当に醜い人達でね、 そんなつもりはなかったのに、大喧嘩をしてしまったんだ。 全く性根の腐ったとは、あんな人達をいうのだろうな。 まあ、ともかく我慢出来なくて、喧嘩して、帰る気になって、庭に出たんだ。 これまた立派な庭だった。 広々とした庭には色とりどりの花が植えられ、 通路沿いには、一定の長さに整えられた芝生が敷き詰められ、 庭木は一寸の狂いもなく剪定されていた。 よほど良い腕前の庭師が雇われていたのだろうねぇ」 お父様がこんなに他家の庭を褒めるなんて、滅多にないことです。 何しろ私達親子は王族ですから、生まれた時からお城に住んでいます。 最高峰の環境に囲まれて暮らしているのです。 物を見る目が肥えてしまって、なかなか褒める程の感動を得られないのですわ。 「その庭の真ん中で、あの子と出会った」 庭にハイネがいたと言う事かしら。 では、ハイネがそのお屋敷の庭師? あら、でも彼がここの庭にいる事なんてなかったと思うのですが…。
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