第二十四章

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「…アオイちゃん…ありがとうって…俺に礼を…?」 アオイちゃんは何も答えなかった。携帯を押し終えると、力尽きたのかダラリと腕を落とす。 支えを失った携帯が、床へと落ちる。 「……お礼なんて……言わなくていいんだよ…… 俺は、これからもずっと…… ずっとアオイちゃんの傍にいるから……」 ――俺は、涙を流していた。 その涙は、アオイちゃんの頬に落ちると、ゆっくりと流れた。 ……アオイちゃんは、気持ちを表に出せずとも…… 言葉を話せなくなっても…… 俺をずっと見てくれていたんだ…分かっていてくれたんだ… この2年の間でも、俺はずっとアオイちゃんに愛されていた事に気付く。 それは、とても…… とても幸せな事だった。 「……思い出を増やしていこう。これから、もっともっと。 だから、ずっと一緒にいてくれるかな。アオイちゃん……」 俺は優しく、アオイちゃんの頭を撫で… そして、唇を重ねた。 いつ回復するか分からない。 もしかしたら、回復しないかもしれない。 でも……俺は思っている。 気持ちは――通じ合っていると。 「愛してるよ、アオイちゃん」 ほんの一瞬だけ、 アオイちゃんの表情が、微笑んでみえた。       ――― 完 ―――
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