第二十四章

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病院に着き、アオイちゃんの元へと向かう。 「おはよう、アオイちゃん」 病室へ入ると、アオイちゃんはベッドに座り、じっと外を眺めていた。 アオイちゃんは手術の甲斐があったのか、目を覚ます事は出来た。 しかし何も話してはくれない。いつも虚ろで、自分で立ち上がる事すら出来ないでいる。 これが医師の言っていた、後遺症というものなのだろう。 しかし命は取り留めた。それだけで俺は…嬉しく感じる。 「今日、メグミさんの所へ寄ってきたんだ。これ、アオイちゃんにって渡されたよ」 先程貰ったお守りをアオイちゃんに握らせる。 「早く元気にならなきゃね」 微笑んでみせるが、アオイちゃんはいつもの通り…無表情。 「外、見てるの?今日はすごいいい天気だよ。――そうだ、散歩にいこうか」 看護師に許可をモライ、アオイちゃんを車椅子に乗せて院内の庭に出る。 「じゃあ、行こうか」 自分のジャケットをかけてあげて、ゆっくりと車椅子を押す。 外に出ると、樹は見事なまでに桜色に染まっていた。花弁が舞い散り、とても綺麗だ。 「うわ、すごいな。満開だ。こうして一緒に桜を見るのも、何回目かな?」 「――あ、ここにいたんだ?おーいっ」 声が聞こえて振り返ると、そこには見知った顔が。 カズと、サオリちゃんだ。
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