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「あ、アオイ…ちゃん…手が…もしかして、意識が…?」
アオイちゃんの手は、今も俺の服をしっかりと握りしめている。
(今までは自分の指を動かす事すら出来なかったのに…)
驚きの表情でアオイちゃんを見ていると、
(――――ッッ!!)
俺は、ある事を思い出す。
夕日の光景…そう、それは…
(思い出した…!そうか、夕日の光景…それは…)
それはアオイちゃんと父親との思い出。
それは俺とアオイちゃんとの初デートでの思い出。
アオイちゃんは、きっとそれを思い出したのだ。
そして、まだこの光景を見ていたいと…そう言っているのだ。
(そうか…想い出…それなら)
俺はアオイちゃんを抱きかかえたまま、ポケットから携帯を取り出す。
あの日から解約をしていない、ラブ・フォーチュンのサイトへ接続する。
2年ぶりに開いたサイト。懐かしさが俺を包む。
「アオイちゃん、これ…覚えていないか?出会い系サイト…俺とアオイちゃんが会話をしてた…俺がパルスで、アオイちゃんはパンジーで…」
一生懸命、思い出話をする。しかし彼女は何の反応も見せない。
(……やはりダメか……)
そう思った瞬間、再び
――きゅっ
俺の手を、アオイちゃんは握りしめる。
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