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「ぎゃあぁあああ‼」
目の当たりにした男の状態は酷かった。両肩から先は無くて脚も太ももの途中から無くなってる。いのが口を抑えてうずくまったのがわかった。
「サ…サスケくん?」
五体満足じゃなくなった男の前に佇んでいるのは紅先生が張った結界の中に一緒に入ってたはずのサスケくんだった。
「…サスケ、お前…」
皆、馬鹿みたいに硬直した中でカカシ先生が真っ先にショックから立ち直ったみたいで。結界から出て来て敵の目の前に突っ立ったままのサスケくんをとりあえず安全な所に離れさせようと動きかけた先生は、サスケくんの顔を見て動けなくなった。
「…カスの分際で…よくも蒼華様を侮辱してくれたな」
サスケくんが何を言っているのか、分からなかった。でも、これ以上無いくらいにサスケくんが怒っている。サスケくんはさっき使った闇色の剣を使わずに敵をいたぶり始めた。楽に死なないよう、加減を付けて。
「な…なんだお前はァ‼」
殺される。こんなガキに。そう感じたのだろう男達は狂ったように喚いた。
「…お前らみたいなクズが蒼華様を利用しようとするなんて…」
立場をわきまえろよ格下が。低く這うようなサスケくんの声と共に降って来た殺気。先程のものと桁違いだと、この身で体験することになった。そうね、例えるなら産まれて来たことに後悔する感じ。立っている最後の敵の一人が吹っ飛んだ。はいつくばった男の胸を容赦無く彼は体重をかけて踏みにじる。――いや彼は本当にサスケくんなんだろうか?呻き声を上げた男に更に気分を害したらしく、彼は闇色に妖しく輝る剣の切っ先を男の首筋にヒタリとあてた。
「止めて‼」
彼がやろうとしていることを理解して裏返った声でなんとか叫びながら心の中で思った。きっと、そう、これは幻術よ。サスケくんはこんな人じゃない。間違ったって無表情で人を殺せるような人じゃ…
「―――朱華」
良く通る静かな声で呼ばれた誰かの名前にサスケくんは一瞬で声の主の元に移動し片膝をつき服従を示した。さも、当たり前の動作の様に。その姿はといったら、とてもうやうやしかった。
「蒼華様…」
そしてサスケくんはまるで私達の存在そのものを忘れたかのようにナルトに魅入った。そう、サスケくんが『蒼華様』と呼んだ相手はあのドベで意外性No.1のナルトだったのよ。
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