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「そこまでにして置け。下忍達が怯えてる」
「…御意」
サスケは蒼華様と呼んだナルトの前に膝付きながらちらりと今思い出したかのようにオレ達に一瞥を寄越した。
…正直ぞっとした。あれはもう下忍の出せる殺気じゃないだろう。
「…サスケ?」
自分の部下が他里のおそらく暗部レベルの奴らをものの数秒で倒した。オレより遥かに強いだろう相手を、しかも20人以上も。そのことの恐怖をなんとか受けとめようとやっとの思いで声を掛けた。彼は答えない。ただ、黙ってナルトに膝付いて彼の指示を仰いでる。その彼らの姿に何故か、聖なる神々しさすら感じてしまった。しかし――蒼華に朱華だって?
「ナル」
「この方のお名前を軽々しく口に出すな」
殺すぞ。噛み付くように言われ、黙り込む。じゃないと本当に自分の部下に殺されかねない気がして、背中に嫌な感じの冷や汗を感じた。
「…別にいいって、朱華――サスケ」
ナルトがやっと口を開けた。普段の彼からは考えられない酷く落ち着き払った様子。
「ですが…」
「サスケ、結局お前バラしたな。あ―もう、今までの努力が水の泡だ」
「申し訳ありません」
「…反省全然して無いだろ」
まったく、しょうが無いな奴だなと笑う。大人びたその口ぶりには普段の彼はかけらも感じられない。ああ、今やっと分かったよ。それがお前達のいや、貴方がたの本当の姿の―――
「蒼華様に朱華様だって?!」
「貴方がたが?!」
アスマと紅が正気に戻ったらしく一瞬驚きで固まるがすぐに尊敬の眼差しを送りつつサスケと同じように膝付いた。そりゃそうだ。蒼華様といえばこの里の守護神にして鬼神。暗部総隊長だ。上忍レベルで知らない奴はまずいない。かくいうオレも総隊長には暗部に籍を置いてた時代に暗部待機室で偶然その姿を一度だけ目にした程度だった。任務を組んだことは一度だって無い。彼は副隊長である朱華としか任務を組まないと有名だった。朱華にしたって見たことの無い人が大多数だ。だがオレは―――総隊長を一目見た時から彼のことを一瞬でも忘れたことは無い。それは今だって同じ。
「総隊長…」
何年ぶりか分からないが彼にまた会えたことの喜びでそんなことどうでもいい。ああ、姿は違うけれどその纏う雰囲気は紛れも無く貴方だ。オレを見る貴方の視線にどうしようも無く震える。オレは総隊長に―ナルトに触れようとして吹っ飛んだ
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