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重く、ゆっくりと開いた扉の先には深い混沌と、深遠の闇。それは我々にこの先にあろう絶望と、一筋の希望を与えるような闇。
その闇に、我々は踏み込んだ。次から次へと同胞が扉の闇へと入っていく。その時だった。
「待って!」
一人の人間の娘が、突如我々に呼びかけてきた。その娘にその場にいた全員が注目した。震えながらもしっかりと我々を見ている人の娘を。
「人の子よ。今更我等に何を求めに来た?」
「私達を・・・いえ、この世界を救って欲しいの!」
娘は目に涙を湛えながら我々に願った。心からの願いだった。しかし
「人々は我々を否定した。その事実がある以上、我々は願いを聞く必要はない。それは娘、お前も一緒だ。」
「仮にお前の願いを聞いたところでお前も、他の者も結局は変わらないだろう。」
「今の人が我々を肯定したところで、いずれまた慢心し、我々を再び否定する。同じことだ。」
「己の身を削ってまで、何故この世界を救う為に留まる必要がある?既に手遅れのこの世界に・・・。」
そう言って娘の願いを無視し、一人、また一人と扉の先に踏み込んで行く。
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