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次の日竹下と“右の子”は出会う事になる。ただ単に駅から学校までの道中に偶然彼女を見つけただけなのに、竹下は運命だと信じ込んでいた。学校が真隣で、登校する時間帯もだいたいが全国共通で同じくらいの時間だ。そりゃ出会うだろ。と言ったがもう聞く耳を持たなかった。
それから毎日同じ時刻に登校するようになり、教室に入る俺を毎日満面の笑みで迎えた。
6月も終わろうとしてた頃、急な雨が2人の登校時間に降った。竹下は物持ちがよくいつも鞄に折りたたみ傘を入れていた。彼は改札を出るとその折りたたみ傘を開いた。
彼女は雨の中小走りで学校へと急いでいた。徒歩五分だが、雨の中傘もささずにずぶ濡れになっている彼女にしてあげられる事は竹下の中でもう決まっていた。
竹下は後ろから彼女を追いかけると、横に並び声をかけた。「はい。これ貸してあげるよ。」竹下は傘を彼女に差し出した。
「え?それじゃあなたが濡れちゃうよ。」と彼女は心配そうに竹下に言った。
竹下は優しい彼女の言葉に一瞬気が遠のき、向こうの世界へ行きそうなのを必死に堪えた。
ここで引き下がれないし、引き下がるつもりもない。彼女はびしょ濡れでYシャツの下の下着が透けていた。
「赤…」
「え?」
思わず口にしてしまった。「いや何でもない!貸すよ。学校すぐそこだし俺は大丈夫だよ。」
竹下は半ば強引に傘を渡すと雨の中を走り出した。自分クールだと思った瞬間後ろから声をかけられた。彼女の声だ。
「あの、じゃぁ一緒に傘に入りましょ。」
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