北川健人

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俺は世田谷区にある古き伝統のある男子校に通っている。正門をくぐると誰もが一度は耳にした事があるだろう人物の銅像が生徒を見下ろすように建っている。どうやらこの高校の創立者で偉大な人らしいのだが、その銅像に手を合わせ拝んでいる人はおろか、気にも止めずにそれをまるで石ころのように通り過ぎて行く生徒達。そして教師達。おいおい、この人が何を成したかは知らないが、高校を創立するくらいだきっと立派に生きて立派に死んでいったのだろう。じゃなきゃ銅像なんて建たないだろ?少しは気にかけてやれよ。 なんてこれっぽっちも思っていない。この人は死んだ後に自分が銅像になるだなんて想像もしなかったかもしれない。いやしなかっただろう。それを望んでいたのかどうかも定かではない。むしろ俺だったらまっぴらごめんだ。俺は金日成でもヒトラーでも、天皇陛下でもなんでもない。勝手に祭り上げられ、銅像にされ、どんなにハンサムに造られようが、過去の人間を地に縛り付け今を生きる人間に何を教えようというのか。俺には理解できない。
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