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須藤は眉間にシワを寄せ考えている。三十歳でこのハゲ方は遺伝なのかな?と疑問に思った。なにせ、眉間にシワを寄せると五十代半ばくらいに見える程だ。俺はクスっと笑ってしまった。声に出したつもりはなかったが、すぐに須藤の鋭い目が俺に突き刺さった。
小さく咳払いをすると須藤は話し始めた。
「お前何を企んでる?最近良い子過ぎないか?いつも授業が終わると杉野達とすぐに帰るようだが何をしている?」
思わず笑ってしまった。お前は俺の彼女か。
「何がおかしい?」と須藤はイラついた態度で俺を威圧した。
多少イライラしたがすぐに冷静になった。こいつは間違ってはいない。悪いのは学校という組織だ。教師というだけで生徒の全てを知っている気になってやがる。だから、自分の知らない事や不安要素が出てくるとそれを知るのが義務だと思い支配しようとする。それが自分の仕事だと、生徒を教育し指導していくことが自分のやるべき事だと錯覚をおこしているんだ。しかも怖いのは幼少の頃からそう教育されている俺ら人間は、それが当たり前だと思っている。だからそこに生まれる錯覚に生徒も気づかない。教師達は神でも独裁者でも親でもない。生徒の上に立ち、生徒を管理し、生徒に指導しているうちに「自分の存在意義が生徒」という定義に辿り着く。そうなると話は早い。そこから自分の存在意義を確かめるように生徒の全てを支配しようとする。それが生徒の為だと思っている。そこには恐らく生徒の未来をボールペン一本で左右出来るだけの力と権限があるからである。圧倒的な力の差が、教育という名の洗脳が生んだ大きな錯覚。それが学校であり教師である。
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