ダンナの浮気

調査

料金が変わり映えしない数社の中で、決め手になったのは電話対応。どこに電話をしても似たような事務的な受け答えだったけど、Ｓ探偵事務所だけは違った。依頼内容が浮気調査だと告げると、電話の向こうの年配女性が心底同情したかのように、優しいいたわりの言葉をかけてくれた。それだけで決めてしまうんだから、私もチョロいもんだ。詳しい説明と打ち合わせのために探偵事務所の人と会うことになった。場所を指定するように言われたので、実家の最寄り駅の近くにある本屋を指定した。私がどんな服装で行くかを尋ねられ、相手が声をかけてくるという。本屋に来るのは電話に出た女性ではなく、依頼者との打ち合わせ担当係の男性だ。
翌日の夕方、約束の時間より少し早く本屋に行き立ち読みをした。何を読んだか覚えてないが、たぶん文字も写真も目に入ってなかった。緊張していた。テレクラなんかで知り合って待ち合わせする人って、こんなカンジかな？なんて考えていた。数分後、スーツ姿の30代とおぼしき男性が、そっと声をかけてきた。
男「〇〇さん(私の名字)ですか？」