第零章 日 常

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二月の半ばになった頃の昼、家で寛いでいると何の前振れもなく大典(ダイスケ)から電話があった。 「もしもし?」 「やっほー!哲(テツ)~元気~?」 突然の電話の主はとてもテンションが高く、楽しそうに挨拶をする。 「いきなりで悪いんだけどさ~来週辺りから旅行いかね?旅行、行くとしたら今しかないだろう、時期的にさ?――どうよ?」 電話越しに無駄までの元気の良さでケタケタと笑いながら、遊びの誘いをしてくる。 どうやら卒業旅行に行こうという誘いらしい。 俺が来週の日程を確認しようとしていると、大典は続けざまに話し出した。 「旅行さ、卒業旅行。やっぱり海外っしょ?哲。お前も行きたがってじゃん。えーっとどこだっけ?あのーなんとかの地上絵がある所」 俺は半ば呆れた感じで悪態をつく。 「ナスカの地上絵だ。いい加減覚えろよ、中学時代にならっただろ?それに地上絵があるところはペルーだ。本当よくそれで大学受かったよな、おまえ」 「ははっちげぇねぇわ!俺もよく受かったと思うよ」 俺の嫌味にも全く動じず、チャラけた口振りをして、大典は笑った。 馬鹿そうな感じのする奴だが大学では五本指に入るぐらい成績が良い。 ――人は見かけによらないとはこのことだ。 大典は電話越しでも人を疲れさせてくれる。 何を言っても無駄だと、俺はため息交じりで来週の日程をカレンダーで確認することにした。
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