男の名は

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男も周りに習って昼食を取ることにしたらしい。 適当な木陰を見つけ、外套を敷物替わりに引くと、その上に胡座をかいて座り込んだ。 そして背負っていた袋を地面に下ろすと、簡単に解け無いようにした独特の結び目を器用に解き、中から一つの包みを取り出す。 動物の皮をなめしたらしいその包みを開くと、中には何やら葉っぱのような物が見える。 さらにその独特の香りがする葉を取り除くと、中に入っていたのは乾し肉だった。 包みから残り少なくなった乾し肉を一枚取り分け、残りをまた丁寧に包み直し背負い袋に仕舞い込む。 そして、その背負い袋の口をしっかりと閉じると、再び袋を背負った。 体に身に付いた、不測の事態に備える為の習慣だ。 そこまで準備を整えると、やっと彼の食事は始まる。
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