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男は、腰に吊してあった水袋を外すと口元に持って行く。
水を一口だけ口に含み、口の中を十分に湿らせてから、乾し肉を一口かじってゆっくりと噛み締める。
旅の途中に狩った獣で作った、自家製の乾し肉だ。
味どころか塩気すら無い。
辛うじて、保存目的に一緒に包んであった野草の移り香を感じる程度だ。
それでも、良く噛み締めればそれなりの旨味は感じる。
何度も噛み締め、本当に何の味もしなくなったらゆっくりと飲み下す。
そしてまた水を少しだけ口に含み、乾し肉を噛る。
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開かない門と、周りの人々を何気なく眺めながら、そんな事を4、5回繰り返した頃に、門がゆっくりと開き始めた。
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