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イヤホンが壊れるのはいつものことだし、いい加減もう慣れていた。
後ろから吉原薗嘉の怒声がかすかに聞こえた。
何を言っているのかよく聞こえなかったため新品のイヤホンを耳から外そうとしてつまむと「ブツン」という音をたてて、それから音を発するのをやめた。
おそらく、壊れたのだろう。
振り返ると、何か物を投げたあとのような格好をした薗嘉と、こちらへ飛んでくる我が校の学生鞄が目に入る。
コンマ一秒ほどして、後者は文字通り俺の目に入った。
「うっぎゃあ」
やべえ超痛ぇ。
短く悲鳴を上げたあと、顔ごと前へ吹っ飛ばされ、地面に叩きつけられる。
背中、頭、足の順番で地面に叩きつけられ、それぞれの痛みを味わった。
まず、背中を地面にビタンという風に打ち付けることで、慣性によって内臓が圧迫を受ける。
続いて、頭を地面に強打して脳ミソが大きく揺れ、視界がサイケデリックな星屑で満たされる。
最後に足の付け根の、骨が出っ張った嫌な部分を地面にぶつけ、地味な痛みに身悶えた。
何故だ。
薗嘉から暴行を受けるのはいつものことだが、イヤホンと違ってこればっかりは慣れない。
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