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「おばあちゃん、お使いにきたよ―っ」
…………………。
「おばあちゃーん?」
……………。
「おばあ…ちゃん…‥?」
…………。
扉の向こうであかずきん…いえ、白ずきんは何度も何度も呼び掛けました。
いつもなら眠っていても直ぐ目を覚まし、暖かい声で読んでくれるお婆さんの返事をいつまでも待ちました。
10分、30分、1時間、二時間…‥
膝を抱えて彼女は待ちました。
それは、黙って人の家へ入ってはいけないとの言い聞かせをきちんと守るためでした。いつまでも、いつまでも。
三時間が経った頃、太陽が顔を隠し始める時間になっていました。
彼女はようやく立ち上がり、もう一度呼び掛けました。
「おばあちゃーん」
…返事はありませんでした。
勇気をだして、彼女は扉を開きました。
ギイッ……‥
「おばあちゃ…っ…‥‥!!」
彼女はショックの余り、声も涙も出ませんでした。
普段は温かい瞳が剥き出しになり
普段は白い肌が赤く染まり
普段は優しい唇がだらしなく開き
普段は甘い香りの部屋は血の生臭い臭いと焼け焦げる様な異臭が漂い
純白のパジャマと白い壁には
赤黒い血が飛び散っていたのですから。
彼女は立ち尽くした後
ベッドを見ました。
一人の男が幸せそうに眠っていました。
「…そっか。」
頭の良い彼女は一目見て、惨劇の正体を理解しました。
一言呟いた後唇がにやりと動きました
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