五月七日

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 雨が、降っていた。  一昨日から降り続けたその雨は、天気予報では明日の朝には上がるそうだが、今は相変わらず窓の外の世界を洗い続けている。  雨は、嫌いだ。  悲しい事を思い出すから。  こんな風に、なにかを背負いながら生きていくという事は、辛いことだ。生きている限り、それは突然襲いかかってくる。  例えば、信号待ちで目の前を行き交う車達をぼーっと眺めている時。  例えば、夕方、犬の遠吠えが聞こえてきた時。  そして、雨が降り出した時――  ふとした瞬間に、記憶の波が打ち寄せてくる。そして、後悔と悲しみに全身を縛られ、泣きそうになってしまう。  でも、年月が流れるにつれ、その頻度は減ってきている気がする。昔は抑えきれなかった慟哭も、今は心の中だけに閉じこめる事が出来る。 「慣れちゃったのかな……いや、忘れようとしているのかも」  時の流れっていうのは残酷だなと、どこかで聞いたような言葉を口にして、自嘲気味に鼻をすする。  忘れてしまうなんて、許される事じゃないのに。  いつまでも感傷的になってる場合じゃない。開け放っていた窓を閉めた。  僕には、今から登校という重要なイベントが待っている。  今はそちらが先決だろうと自分に言い聞かせた。
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