五月七日

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 今日は、五月七日。  連休明けの最初の登校日だ。遅刻するわけにはいかないだろう。  そして何より、退屈な日常の中で登校する時だけが、僕の楽しみと言って良かった。  ――今日は、彼女に会えるだろうか。  僕は、恋をしている。  いや、違う。それを恋と呼ぶのは、あまりに短絡的な気がする……が、とにかく気になる人がいる。  初めて彼女を見たのは、一ヶ月前。あの日も、雨だった。  彼女は、通学路途中の小さな公園のブランコに座り、空を見上げていた。  その姿が、あまりに美しくて――そして、優しくて。僕は、一瞬で心を奪われてしまった。  名前は知らない。話した事もない。ただ、制服から同じ学校の生徒だということはわかった。  だけど、そんな事はどうでもよかった。  空を見上げる彼女の大きな瞳は、とても綺麗だった。  空を、雨を、世界を――その全てを優しく映し出してていた。  それが、雨が降ると鬱々とする僕の心を救ってくれるような気がして……ただ、そんな気がして。その日から、彼女を探してしまう自分がいた。  透明なビニール傘越しの空に、彼女は何を見ていたのだろうか。  もしかしたら僕は、自分には見えない、この世界の美しさを教えて欲しいだけなのかもしれない。
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