【第一幕 銀色の暁】

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 先程の私の言葉で神経を逆撫でされたのか、男達は青筋を浮かべ、無言でにじり寄って来きます。あれしきの事で怒るとは、カルシウム不足ではないのでしょうか。  あと、無言は止めて下さい。マジで怖いです。  私も今年で十五歳。捕まればどんな仕打ちが待っているか容易に想像がつきます。    相も変わらずという私ですが、わりと事態は深刻。助けが来る気配はありません。  それも当然の事です。ここにいるハゲ達の討伐の依頼を受けたのは私自身であり、本来なら助けを求める事自体お門違いなのです。自分の尻は自分で拭け。まことに厳しい世界です。  さて、いよいよ暑苦しい人達が、私の眼前にまで迫って来ました。手を伸ばせば触れられる距離。それでもそうしないのは、狩る側として、ある一種の優越感に浸っているのでしょう。  身長百五十センチにも満たない、ミニマムサイズな私をいたぶって悦ぶとは、とんだ変態達です。    ついに、私の細腕が男の一人に掴まれました。強引に引き寄せられそうになるのを必死で抵抗します。  こう見えて私は腕っぷしにはいささか自信があるのですが、やはりそこはいたいけな乙女と大の男の差。大して時間も関わらず、床に引き倒されてしまいます。  頭打ちました。もの凄く痛いです。  自慢のブロンドの髪が地面に広がり、崩れた天井の隙間から垣間見る青空。  ああ、この世界に神様はいないのでしょうか。  神様ー、ここに麗しき乙女が至高のピンチを向かえておりますよー。  現実逃避気味に、居もしない存在に向かって助けを求めてみます。当然応答があるわけもなく、諦めて私が固く目を閉じようとした――その時。  閉じゆく視界の端。地面に横たわる私からでも見える、山積みになった瓦礫の上。  黒いコートを身に纏い、誰かが立っていました。  男か女かも分かりません。フードを深く被っている上に、何とも微妙な体格に微妙な身長をしているからです。  やがて、男達の一人がその人に気がつきました。次々と私から意識がそれていきます。 「何だテメェ!!」  先程私を引き倒した男が怒声を上げます。  コートの人は答えません。ただ無言でたたずんでいます。  やがて痺れを切らした男が手に持っていた銃をコートの人めがけて発砲しました。  辺りに響く銃声。  一瞬の間。  コートの人は平然と立ったままです。外れたのでしょうか。
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