第二話 鈍色のマリオネット②合わせ鏡

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 放っておくと何処までも迷走しかねない現状。進行役が必須です。そして、その任を(勝手に)引き受けたのがこの私。  人呼んで、鍋奉行。  東の小国伝来の絶対的支配者に送られる称号!  これ以降、何人足りとも私の許可無しに発言する事は許されません。  ……心の中での台詞なので致し方のない事ですが、ツッコミが入らないのは些か寂しいものです。  しかし、そんな事でめげる私ではありません。 「さて、まずは順を追って聞いていきましょう。……そこの妹もどき、貴女が何なのか、簡潔にかつ分かりやすく説明して下さい」  すでに紅茶を飲み干しアホ面を引っさげている妹もどきに、びしっと指をつきつけます。 「妹もどきって……ひでぇなオイ」  私の言葉に肩を竦める妹もどき。冷静にと言った傍からイラッときました。 「彼女は人工生命体(バイオロイド)さ」  そこに割り込んできたのは彼の優男。 「ええい、貴方の発言は認めていません! ばいおろいど? 何々ですかそれは!? 私は分かりやすくと言ったはずです! そんな訳の分からない単語一つで片付けられても分かるはずないじゃないですか!!」 「あ、アリス落ち着いて!」  訳の分からない事を笑顔で言われ、私の頭はついにオーバーヒート。今ならヤカンに入ったお湯も沸かせそうな程、激しく憤慨します。 「ハッハッハ、まあ落ち着いて下さい」 「お前が言うな!!」  ついつい口調も乱暴な物に。 「バイオロイドってのは、簡単に言えば有機体で造られたロボットみたいなもんダ。マ、そうは言っても体の造りは人間と変わらネェ。メシも食うし、年もとるし、子作りだってできル。つまるところ、ワタシはレッキとした人間だヨ」  意外にも順序よく行われた妹もどきの説明。正直、分かりやすくはなかったですが、少なくとも彼女が何なのかは理解できました。  技術面も今は良しとしましょう。おそらく、前文明技術の流用――世の中、知らない事の方が多いものです。  しかし、それでも納得のいかない事が一つだけあります。それは―― 「確かに、少なくとも貴女が『何なのか』は分かりました。しかし、貴女が何故私の妹の姿をしているのか、それが理解できません。納得出来るように説明して下さい」  決して目を逸らす事なく、私は彼女に問います。  そんな私の視線を真正面から受け止めながらも、彼女は大胆かつ不敵に笑ってみせました――。
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