第二話 鈍色のマリオネット②合わせ鏡

7/10
前へ
/242ページ
次へ
「何やら賑やかしいですな」  大した進展もないままノアと向かい合っていますと、そこにペテロさんとエデンか登場。それぞれの手には、様々お茶受けが乗った皿が置かれています。 「オー、待ちわびたゼ」  イスに沈めていた体を勢いよく起こし、少年のように瞳を輝やかせるノア。  妙に慣れ慣れしい態度ですが、それもそのはず。どうやら彼女と優男は、ペテロさんの知り合いらしいのです。  いくら知り合いだからとはいえ、いきなり窓から不法侵入はどうかと思うのですが、ペテロさんはそれすらも笑って許されました。  彼曰く。  元気があって羨ましい、との事。  ……ツッコミませんよ? ええ、ツッコミませんとも。  しかも、遺跡発掘護衛依頼のもう一組が彼女等との事。優男は分かりませんが、ノアは絶対に文化財の尊重とは無縁そうです。 「ドウゾ」  そう言って私にお茶受けを渡してきたのは、エデン。 「ありがとうございます」  座っている私が受け取り易いように高さを合わせてくれます。行動の端々に見受けられる小粋な気配り。どっかの誰かさんに見習わせたいです。 「ノアさんもドウゾ」 「サンキュー」  まるで引ったくるような受け取り方。変な言い方かもしれませんが、エデンの爪のアカでも煎じて飲みやがれなのです。 「そういえば、何だか外が騒がしいですな……」 「そう……ですね。言われてみれば……」  ノアの相手をしていて今まで気がつきませんでしたが、耳を澄ますと屋敷の外が多少騒がしいような気がします。  そこで思い当たったのが、先程風に当たりに行くと言って出ていったシエル。そして、それについていった優男。何だか、激しく嫌な予感がしてきました。
/242ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2279人が本棚に入れています
本棚に追加