2279人が本棚に入れています
本棚に追加
「……マ、古今東西女子供を護るのは男の仕事ダ。『外の事』はアイツラに任せて、ワタシ達は茶を楽しもうゼ」
「――え?」
唐突なノアの言葉に、私が思わず聞き返した――その時です。
窓ガラスが割れた時の感高い音。それと共に、屋敷内へと何かが転がり込んで来ました。
それが何なのか、確認する暇もなく割れた窓からもう一つの影が。
影は、銀色の光を散らしながら私達の目の前――窓ガラスを割った、何かの元へと着地します。
「シエル……一体何をしているのですか?」
聞くべき状況ではないと理解しつつも、私は聞かずにはいられません。
何故なら彼の足元に横たわるのは、全身を黒のローブで覆った人物。
何が起こっているのか、聞かずにはいられないでしょう。
「下がってろ」
私の問いにそれだけ答えると、シエルは手に持っていたアーティファクトを振り上げ、躊躇する事なく振り下ろします。
ドスンという重々しい音と共に、コロリと何かが私の足元に転がってきました。
「へ――?」
それと『目が合った』瞬間、私は無意識の内に情けない声を洩らしていました。
「く、首っ! 首が――!!」
これまで幾度ともなく死体は見てきました。しかし、これは無しです。スプラッタです。頭と体がさようならです。乙女が見ても良いものではありません。
「落ち着けヨ」
「どうして落ち着いてるんですか!?」
何事もないかのように生首を静観しているノアに思わずツッコミ。いけません、頭がパニックです。脳内で妖精さんと小悪魔が舞い踊っています。滅茶苦茶楽しそうです。混ぜて欲しいです。
まさしく、自分でも何を言っているのか分からない程のパニックぶり。
「喚くナ。よく見てみロ」
「喚いてませんよ! 貴女私の心が読めるんですか!?」
そう反論しつつも、私は言われた通りにします。
そこには、頭のない体と生首。凄惨な光景。――が、何か違和感を感じました。
「中身が……」
断面から垣間見るのは、想像していたような生々しいものでは無く、空洞――吸い込まれそうな闇が広がっていました。
最初のコメントを投稿しよう!